2024年04月10日 更新 (2024年04月08日 公開)
栄作こと鎌田信行。現在は、先代犬ももが残してくれた子ども、奈々とナチョと暮らしている。コロナ禍に始めたSNSで人気に。将来はシーズーカフェも検討中。
空飛ぶロケット犬・シーズーの奈々ちゃんと弟・ナチョくん、飼い主・栄作さんのくらしとは?
目次
- 同じ母犬から生まれた、空飛ぶシーズー・奈々ちゃんと弟のナチョくん
- 「ある日突然飛んできた」ロケット犬、誕生の瞬間
- 世界の「見守り隊」に向けて、愛犬の様子を365日24時間ライブ配信
- 人生2度目のサプライズから始まったシーズーとの共同生活
- 6時間の難産、逆子で仮死状態…壮絶だった愛犬の自宅出産
- 愛犬との濃密な思い出が「ペットロス」から救ってくれた
- 「愛犬と常に全力で向き合いたい」“シーズーまみれ”なくらし
同じ母犬から生まれた、空飛ぶシーズー・奈々ちゃんと弟のナチョくん
「シーズーっておっとりしていて、のんびりな子をイメージされがちだけど、うちのふたりは飛ぶし跳ねるし、全然イメージと違うんですよね(笑)」
離れた場所にあるソファを軽々とジャンプし、至近距離から飼い主さんの懐にダイブ! まるで「ロケット」のように飛んでくるワンちゃん、シーズーの女の子・奈々ちゃんです。勢いよく発射する「奈々ちゃんロケット」の様子は投稿のたびに大バズり。
「『穏やかな性格で飼いやすい』とよく言われるシーズーですが、奈々は超お転婆娘。留守番中に家中の壁紙をビリビリに破いていたり、ゴミ箱をひっくり返していたりは日常茶飯事です」
飼い主の栄作さんは、奥様と2人のお子さん、奈々ちゃん、ナチョくんとのにぎやかな4人と2匹暮らしです。
しかも奈々ちゃんとナチョくんは、実の姉弟。ふたりとも、栄作さんが最初に迎えた母犬のももちゃんが自宅で出産した子です。
そんな奈々ちゃんやナチョくんとの出会いや壮絶な自宅出産、愛溢れる多頭飼いライフなどを聞きました。
「ある日突然飛んできた」ロケット犬、誕生の瞬間
コロナ禍で時間ができたことを機に始めたSNSに“ロケット犬・奈々ちゃん”の動画を投稿したところ、まさかの大バズり。一般的に穏やかでおとなしいシーズーのイメージを覆す超アクティブな様子に、テレビ番組で取り上げられるほど大きな反響がありました。
「ある日突然、ソファで寝ている私のお腹めがけて飛び込んできたんです。私が『うっ』と苦しそうに声を出すのが、喜んでいると思ったのでしょうね。その日以来、なぜか毎日何度も私のもとに飛んでくるようになりました」
かねてより超お転婆娘だった奈々ちゃんは、その日を境に「空飛ぶロケット犬」へと進化したのです。さらに、なんと奈々ちゃんのジャンプを見て、母犬のももちゃんや弟のナチョくんも真似するようになったとか。
「ももは両手をピーンと伸ばして飛んでくるからお互いダメージが大きいんですけど、奈々は飛び慣れていて、着地がうまいんですよ(笑)」
そう語りながら、ちょっぴり嬉しそうな様子を隠せない栄作さん。
「『元気いっぱいな奈々を見てシーズーをお迎えした』というコメントをいただくこともあって、すごく嬉しいですね」
世界の「見守り隊」に向けて、愛犬の様子を365日24時間ライブ配信
一方で、SNS上の愛くるしい姿だけを見て安易に犬猫を迎える人がいないよう、「多頭飼いの大変さなどリアルな日常も伝えていきたい」と話します。
実際に栄作さんは毎日24時間、YouTubeで愛犬の寝室を映した配信をしています。この配信は、日本のみならずアメリカやブラジルなど世界中のファンから大人気。(2024年4月9日をもって終了予定)
自分の愛犬のように奈々ちゃん、ナチョくんの成長を見守る「見守り隊」がたくさんいるのです。
「ナチョが生後30日目の頃から1年以上ずっとカメラを回しています。私たちの就寝中や外出中も配信しっぱなし。ファンの方が『いたずらしていましたよ』とか教えてくれることもあります(笑)。皆さんが奈々やナチョを自分の子供のように愛して、成長を見守ってくれていたのがありがたいですね」
“我が子”のように見守るファンが多いからこそ、投稿を見て「怪我していませんか?」などと心配の声が直接届くこともあるのだそう。
栄作さんは「安心して投稿を楽しんでもらえるよう、一つひとつのメッセージに丁寧に状況を説明して返信するようにしています」と話してくれました。
人生2度目のサプライズから始まったシーズーとの共同生活
今では“シーズーまみれ”な生活を送る栄作さんですが、ワンちゃんとの出会いは小学生の頃、マルチーズの「マルちゃん」をお迎えしたことから始まります。
「犬を飼いたいとせがむ私に、母がサプライズでお迎えしてくれたんです。もう嬉しく嬉しくて、すごく可愛がりました。思春期の悩みが多い時期には、よく愛犬に話しかけていたのを思い出します。“ペット”というより、“親友”とか“相棒”のような存在でしたね。それから、大の犬好きになりました」
栄作さんが社会人になった頃、長年連れ添った“相棒”が旅立ち、しばらく犬を飼うことはありませんでした。しかし、結婚し2児の父となった栄作さんのもとに、ある運命的な出会いがありました。
「近所のホームセンターのペットショップで、他の子よりちょっぴり大きかったけれど、ショーケースのわずかな隙間から一生懸命匂いを嗅いでくる子がいました」
それから、なんとなく存在が気に掛かって、週に何回か様子を見に行くように。
「初めて会った時はまだ5ヶ月でしたが、時が経ち、気づけば7ヶ月になっていて。また会えた喜びや安堵感と、『早く家族が見つかってほしい』という気持ちで、毎回複雑な感情を抱いて帰っていました」
そんなある日、ペットショップの店長から「あさって別の店に引越しになる」と聞かされます。「もう二度と会えないのか」と心の中で泣きながら別れを惜しみました。
しかしその数日後、栄作さんが帰宅すると、リビングに見覚えのあるワンちゃんの姿が。
幼少期にサプライズで犬を迎えた栄作さんのエピソードを聞いていた奥様とお子さんたちが、栄作さんのために内緒で仕込んでくれていたのです。
その日から栄作さん一家は、シーズー愛の溢れるくらしが始まります。
6時間の難産、逆子で仮死状態…壮絶だった愛犬の自宅出産
前述の通り、奈々ちゃんとナチョくんは、自宅出産を経て生まれた「実の姉弟」です。ももちゃんを迎える前は「子供をつくる」選択肢すら浮かんでいなかったという栄作さんが自宅出産に踏み切った理由は、先代犬・ももちゃんへの深い愛情が関係しています。
「もものあまりの可愛さに、家族全員ハマっていってしまって。そのうちに、『いつかこの子がいなくなったらどうしよう』って不安がよぎるようになったんです。それで、『この子の遺伝子を残しておきたい』『ももの子供の顔が見たい』と考えるように。こんな考えは人間のエゴかもしれない、とかなり悩みましたが、この気持ちを抑えることができませんでした」
相性が良かったシーズー犬と交配をし、妊娠。2匹の赤ちゃんがお腹にいることがわかりました。
このとき、栄作さんに犬の妊娠や出産に立ち会った経験はなく、犬の自宅出産に関する情報も多く出回っているわけではありませんでした。
特に、シーズーのような短頭種は難産になる確率が高いという情報もあります。そこで栄作さんは情報収集を行いながら、同じ愛犬シーズーの出産に立ち会った経験があるフォロワーさんや獣医師、ブリーダーとコンタクトを取り、準備を進めました。
そして迎えた出産予定日。段ボールで作った巣箱の中で陣痛が始まってから6時間もの時間が経過。専門家や経験者の指導を受けながら、栄作さんはなんとか仔犬を取り上げます。
しかし奈々ちゃんは逆子で生まれたため酸素が行き渡っておらず、数分間は仮死状態という予断を許さない状況が続いたといいます。
「私自身犬の赤ちゃんを取り上げた経験もないですし、本当にパニックになりました。でも、ここで命を落とさせるわけにいかない。そう思って、無我夢中で100gほどの小さな体に心臓マッサージを施したところ、息を吹き返しました」
「その瞬間のことは今でも鮮明に脳裏に焼きついています。心の底からほっとしましたし、文字通り命懸けで産んでくれたももには感謝しかありませんでした」
生まれた仔犬は「奈々ちゃん」「武蔵くん」と命名。栄作さんファミリーは一気に賑やかになりました。出産後、ももちゃんにも変化があったそう。
「甘えん坊だったももが、すごくしっかり者になった気がしました。仔犬がピーピー鳴いているとミルクをやりにすっ飛んでいったり、うんちが出るようにおしりを舐めてあげたり。もちろん、私たちは何も教えていません。動物の本能で備わっている母性を感じて、感激しましたね」
奈々ちゃん、武蔵くんの出産から約2年後の2023年、ももちゃんは2度目の出産を経験。今回も逆子でしたが、最初のお産のおかげもあって、「比較的落ち着いて対応できた」と栄作さんは振り返ります。
「犬の自宅出産については賛否両論あるでしょう。でも私は、ももの子供を残しておいて良かった。今でもそう思っています」
愛犬との濃密な思い出が「ペットロス」から救ってくれた
奈々ちゃんやナチョくんも生まれ、幸せいっぱいだった栄作さんファミリーのもとに、悲劇が襲います。なんと最愛のももちゃんが、「免疫介在性溶結性貧血」という難病にかかり、2023年6月に急逝してしまったのです。当時ももちゃんはまだ5歳。早すぎる別れでした。
栄作さんは、突然の喪失感からペットロスに陥り、しばらく立ち直れなかったそう。
「ももが残した子供たちのお世話をするなかで、ももの面影を思い出して辛くなる場面はありました。いまだに、ももと歩いた散歩コースは歩けません。いつも避けています」
しかし、栄作さんを深い悲しみから救い出してくれたのもまた、ももちゃんの存在でした。
「仔犬たちのお世話をしていると自然と気が紛れて、少し楽になる瞬間もあったんです。彼らがいなければ、今もペットロスから立ち直っていないかもしれません。亡くなった後にも、ももの存在の大きさを実感しました」
愛犬や愛猫との別れを経験した人が皆口を揃えて言うのが、『もっと一緒にいればよかった』という後悔。でも、栄作さんは、「後悔はない」とはっきりと言い切ります。
「ももと過ごした5年間は本当に濃密なものでした。ももを迎えたのがコロナ禍だったこともあり、ずっと一緒に過ごせました。お出かけ、旅行、キャンプなど、たくさんできたと思ってます。ただ願うならば、ももがもっと大きくなるまで見届けたかったなとは思います。少なくとも、あと10年は一緒にいられると勝手に思っていましたから」
「愛犬と常に全力で向き合いたい」“シーズーまみれ”なくらし
ももちゃんが産んだ武蔵くんとももじろうくんは父犬のもとに引越し、現在栄作さん宅には姉の奈々ちゃん、弟のナチョくんがいます。
ふたりのお散歩は、栄作さんと奥様が必ず2人で行くようにしているのだとか。家の中ではお転婆で元気いっぱいな奈々ちゃんですが、お散歩はちょっと苦手なよう。
「外に出て用を足すと『任務終了』と思うみたいで、帰りは抱っこをせがんできます」
奈々ちゃんもナチョくんも、食べるのが大好き。特にナチョくんは、自分の皿だけでなく奈々ちゃんの分まで食べようとしてしまうほどの食いしん坊。そんなナチョくんの対策として、ナチョくんだけ少し遅めに解き放たれてガツガツとごはんにありつく様子は、「ナチョまっしぐら」と名付けられSNSでも大人気です。
「犬をお迎えしたことでさらに家族の会話が増え、ポジティブな言葉が家に溢れ、幸福感が上がりました」と話す栄作さん。
大変なことも多い多頭飼いですが、そのぶん幸せも倍増しています。「2匹と一緒に寝るのが一番の幸せ」と話す栄作さんの生活は、まさに愛犬中心に回っています。
「今では家族の話題の中心はいつも犬の話です。犬を迎える前は、正直『犬に服を着せるなんて……』と思ったこともありました。でも、今では一変。買うのは人間の服より愛犬の服やグッズばかりですし、とうとう自分で愛犬のグッズを作り始めるほどに。子供たちには呆れられています(笑)」
そんな栄作さんの胸元には、「Shih Tzu(シーズー)」の文字が。なんとお手製の「シーズーパーカー」なのだそう。
シーズーまみれな生活を送る栄作さんですが、犬を迎えることを考えている人に向けて「将来までしっかり考えてからお迎えを検討してもらえたら」と伝えたいといいます。
「当たり前ですが、犬も猫も、命ある動物は“可愛いだけ”じゃありません。お迎えすればお金もかかるし、病気や介護、看取りを経験しなければいけないこともあります。その命を最期まで大切にできるのか、将来までしっかり考えてからお迎えを検討してもらえたらと思います」
「私が偉そうなことは言えないですが、『常に全力で向き合わないと後悔する』というのは実体験から身に染みて感じています。ももは虹の橋を渡ってしまいましたが、残された奈々やナチョとも後悔がないよう少しでも多くの時間を一緒に過ごしたいと思っています。奈々とナチョにはいつまでも健康で長生きしてほしいですし、楽しい思い出をたくさん作って行きたいですね」