「犬がいても部屋をおしゃれに」シニア犬とくらすインテリアコーディネーターasasaさん流のお家づくり

「15年かけて、じっくり家づくりをしてきました」

そう話すのは、インテリアコーディネーターのasasaさんです。今年16歳のミニチュアダックスフンドのアクアちゃんと旦那さんの3人で、素敵な戸建てでくらしています。

asasaさんは昔から犬とインテリアが大好きで、約15年前、ミニチュアダックスフンドの愛犬アクアちゃんを迎えたことをきっかけに、現在の戸建てを購入。時間をかけてインテリア選びやDIYを通じたお家づくりに励んできました。

asasaさんのお家は、ナチュラル素材を取り入れた、味わいのあるテイストが特徴です。

収納の見せ方も、ポイント。ドッグフードはガラスの米びつに入れたり、ペット用具は部屋に馴染むバスケットにしまうなど、お部屋で浮きがちなペット用品も、ペット用以外のものを上手に活用しながら、おしゃれな空間に仕上げています。

asasaさんはDIY好きでもあります。時には丸棒と布でアクアちゃん用のテントをつくったり、アクアちゃんがソファに登れなくなってしまったときは発泡ブロックを使ってドッグステップをつくってあげたり。

「あったら便利だろうな」と思ったものは、自分で手づくりするのがasasaさん流です。

「テントは、アクアが入ってたらかわいいだろうなと思って作りました。ドッグステップも、段差の登り降りの際にかかる足腰への負担を少しでも減らせるかなと思って」

ワンちゃんがいると、部屋が汚れたり、こだわりのものが置けずおしゃれを楽しめないイメージをもつ方もいるかもしれません。しかしasasaさんは「私はそこまで制約を感じていません」といいます。

「お気に入りのクッションカバーをビリビリにされて落ち込んだ経験とかは、もちろんありますよ（笑）でも、私としては飾りたいものは飾れていますし、犬がいるからといって、何かをあきらめている感覚はないですね。食べ物や誤食の可能性があるものを下に置かないようにするくらいですかね」

最近はかわいいデザインのペット用品も増えていますが、お気に入りのものが見つからないときは、人間用のものまで敷居を広げて探してみるのもおすすめなのだそうです。

アクアちゃんは現在16歳。トイレの失敗回数が増えたり、網膜萎縮症による視力の低下など、歳を重ねるにつれ心配な症状も増えてきています。

さらに、ホルモン分泌が過剰になることで多飲多尿が起きやすい「クッシング症候群」という病気もあるアクアちゃん。1時間に1回はトイレをさせてあげるのが最近のルーティンです。

アクアちゃんが粗相をする度に床の掃除や洗濯に追われていたasasaさんですが、次第に工夫の仕方を見つけ、少しずつ負担を減らしてきているといいます。

「初期の頃はアクアにおむつを履かせていたのですが、なんだか歩きにくそうで。そこで、SNSのDMで他の飼い主さんが教えてくれた『介護服』を試してみることにしました。レスラーのような見た目でちょっとシュールなのですが（笑）脱げることなく、アクアも快適そうです」

さらに、ソファやベッドの下に防水マットを敷くことで、奥まで染み込むのを防いでいます。カーペットやラグは丸洗いができず匂いが気になるため、当てるだけで洗浄できるクリーナーも購入。

最初は部屋中トイレシートだらけで匂いも気になっていたそうですが、回数をこなすにつれて慣れ、「いまでは、こういうものかと何も気にしなくなりました（笑）」といいます。

粗相をされないようにするのではなく、粗相されてしまったとしてもすぐに洗えるように準備をしておくことが、犬にも飼い主にとってもストレスを減らすコツです。

「部屋は汚れやすいですが、掃除すればいいだけと割り切ってます」

また、アクアちゃんの視力や認知機能の低下により、夜の徘徊や壁やものにぶつかりそうになる場面もしばしば。階段などの大きな段差には行かないように敷居やステップを設けたり、気づいたときには「ストップ！」と声かけをするなど、試行錯誤中なのだとか。

フローリングの床に滑らないように、アクアちゃんの足裏には肉球をケアするシートが貼られています。定期的に張り替える必要はありますが、歩きにくさを軽減できているようです。

「部屋全体を滑りにくい素材の床に変えてあげることが一番いいかもしれませんが、全面変えるのはなかなかハードルが高くて。アクアも案外嫌そうにはしていないので、いまの時点では肉球シートで対策しています。ちなみにこちらも他の愛犬家さんから教えていただきました」

戸建てに越すことになったのは、実はアクアちゃんの吠え癖がきっかけでした。

ずっと犬を飼いたいと思っていたasasaさん夫婦は、当時住んでいた賃貸のアパートにケージやペットグッズを揃え、いつでもワンちゃんを迎えられるように準備していたそう。

そんな時に、旦那さんがasasaさんの誕生日プレゼントとして家に連れて帰ってきたのが、いまのアクアちゃんです。

「最初はすごくビビって隠れてしまって、私がアクアの存在に気づくまでに1時間くらいかかったんです（笑）念願のワンちゃんだったし、とにかく可愛くて。『わー！』っとテンションが上がりましたね」

しかし、当時はasasaさんのお仕事が忙しく、慣れないお留守番の不安もあってか、アクアちゃんの吠え癖が始まり、ご近所から苦情が来てしまうこともありました。

「ドッグトレーナーさんもつけたのですが、分離不安気味かもしれないと言われてしまって。なかなか簡単には治らなかったんです。ご近所の迷惑になっては申し訳ないと、戸建てに引っ越すことに決めました」

実家にアクアちゃんを預け、急ぎの物件探し。もともとは5年後、10年後くらいの遠い未来にマイホームを買えたらいいなと考えていたasasaさん夫婦ですが、アクアちゃんを迎えて数ヶ月で戸建ての購入を決めたのです。

引越し後もアクアちゃんの吠え癖は簡単に治ったわけではありませんでした。しかし、目の前には畑が広がる立地で、近隣との間隔も広いため苦情が来ることはなくなりました。

「アクアが吠えてしまっても、ご近所さんからは『全然大丈夫だからね』と温かい声をいただいて。本当にいいところに引っ越せたなあと思っています」

本当は間取りや外観にもこだわってマイホームを建てたいと思っていました。でも一刻も早くアクアちゃんとの快適なくらしを実現するため、引っ越し先の決定を急ぎました。そして、内見1件目で即決するに至ります。

「こだわって家を建てられなかったからこそ、今こうして壁を塗ったり、家具を組み立てたり、自分で手をかける楽しさを感じられているのかなって。手をかけた分だけお気に入りの家になりました。むしろ最初から理想通りの家だったら、ここまで家づくりを楽しめていなかったと思うんです」

アクアちゃんの吠え癖が引越しのきっかけにはなったものの、「この時の選択には1つも後悔していません」とasasaさん。

「子犬のときにしつけトレーニングやお留守番時間を減らしたり、もっとアクアとちゃんと向き合えたら吠え癖も解消できたのかな、申し訳なかったなという気持ちはあります。でも、この家に引っ越したからこそ今のくらしがあるし、素敵なご近所さんにも出会えたので、何も後悔していません」

アクアちゃんは元来根っからのおもちゃ好き。ピーピーなるおもちゃを大量に買ってきては、たった20分で壊されるなんてこともしょっちゅうでした。

「棚の中に隠しておいても、なぜかバレるんです。『早く出せ〜！』ってしつこくせがんできます（笑）年齢を重ねてくると、嗅覚も鈍ってきたのか、あんなに好きだったおもちゃに関心を示さなくなってしまって。少し寂しいですね」

そんなアクアちゃんですが、食欲は衰えることなく、むしろ食い意地は年々増しているのだとか。おもちゃでは遊ばなくなってしまいましたが、鼻でおやつのありかを探すにんじん畑の形をした「ノーズワーク」のおもちゃを買ってみたところ興味を示しました。

一時期は、平衡感覚を失い真っ直ぐ歩けなくなってしまう「前庭疾患」という病気にかかった経験もあります。

さまざまな困難を経験したアクアちゃんですが、いまも持病と戦いつつも、asasaさん夫婦の見守りと工夫のもと、自分の足で歩きながら元気にくらしています。

「犬とくらすって本当に大変なんです」

アクアちゃんの吠え癖がきっかけで住まいや働き方を変えたり、何度も病気になり医療費がかさんだり、外出するにも常にお留守番中のアクアちゃんのことが気になるといいます。

アクアちゃんをペットホテルに預けて旅行をすることもストレスを与えてしまうという理由で、ずいぶんと前にあきらめたのだそう。asasaさんの実家は札幌にありますが、アクアちゃんを飛行機に乗せるのは心配なため、帰省時には24時間もかかるフェリーで帰ったことさえありました。

アクアちゃんを迎えたことで、すっかり犬中心のくらしへと変化を余儀なくされたのです。

「それでもアクアがそばにいるだけで、苦労のすべてが帳消しされます。かわいいだけで帳消しできる存在ってすごいですよね（笑）」

いろんな苦労があっても、アクアちゃんを迎えた喜びは大きい。
もっとこうしてあげればよかったという反省はあっても、アクアちゃんを迎えたことを後悔する日は一度もない。

それがasasaさんの揺らがない気持ちのようです。

「アクアは、人見知りで社交性も低く、吠え癖も治らず、病気がち。一般的に見れば『難しい子』かもしれません。でも、手がかかる子ほどかわいいのかなって思うんです」

ただ、これからのアクアちゃんとのくらしを想像すると、不安はつきもの。

「これまでも犬を迎えた経験はあるのですが、介護をしていたのは母だったので、私はまだちゃんと愛犬を看取ったことがないんです。今までも大変なことはありましたけど、この先はもっと大変になるだろうし、確実に最期に向かっていることを思うと、やっぱり辛いですよね」

時折アクアちゃんの様子をSNSに載せると、『うちの子も同じ病気になったけど、すっかり元気だから大丈夫だよ』『これを使ってみるといいよ』など、他の愛犬家さんたちから励ましのコメントや介護に役立つ情報がたくさん届きます。

「愛犬家さんたちって、自分の子だけじゃなくて他の家の子の幸せも願ってくださる方がたくさんいるんですよね。本当に優しくて温かいコメントを日々いただいています」

人間同様、ワンちゃんの人生もさまざまです。しつけによって吠え癖が治る子もいれば治らない子もいるし、健康体でも急に亡くなる子もいれば、アクアちゃんのように病気がちでも長生きする子もいます。

そこで大事になってくるのは、愛犬がどんな状況になったとしても、臨機応変にくらしや環境を整えていく飼い主の柔軟性なのかもしれません。

asasaさんのお家づくりにも現れているように、自分自身や愛犬が過ごしやすいように工夫を凝らしながら、いまのくらしを楽しむ。思い通りにいかない時があっても、時間をかけて手をかけることで、“愛犬とのくらし”がより愛着のあるものに育っていくのなのかもしれません。

「みなさんも様々な苦労はあるとは思いますが、一緒に過ごせる時間は永遠じゃないから、今この瞬間を大切に、一緒にがんばりましょう」