2024年02月23日 公開
福岡県筑紫野市で『からあげの城南 ジョージ』を2024年1月に開業。大分県佐伯市発祥の若鶏一本揚げを販売。SNSでは相棒ジョージ(柴犬)との遊び記録を発信中。
柴犬・ジョージとツーリングを始めた理由とは?
目次
- 颯爽とバイクを乗りこなす柴犬・ジョージと相棒の土谷さん
- 半信半疑ではじめた愛犬とのツーリング。今ではとっておきの時間に
- 「愛犬なしのツーリングは、もう考えられない」
- 愛犬と仲良くツーリングをする姿が人々にもたらすもの
- 「育犬ノイローゼ」の経験が愛犬と真剣に向き合うきっかけに
- 愛犬との向き合い方に正解はない。自分なりの答えを探すことが大切
- 唐揚げ屋の開業と共に始まった、愛犬との新たな物語
颯爽とバイクを乗りこなす柴犬・ジョージと相棒の土谷さん
バイクに乗る男性の背中に、ちょこんと乗る柴犬・ジョージちゃん。お揃いのゴーグルを付け、颯爽と走るふたりの姿は、SNSやテレビなどでたびたび話題となっています。
「ジョージなしのツーリングは、寂しすぎてもう考えられません」
そう話してくれたのは、ジョージちゃんの相棒の土谷さん。2024年1月には「ジョージとずっと一緒にいたい」という想いから、サラリーマン生活を離れ、自身のお店『からあげの城南 ジョージ』を開店しました。
愛犬を溺愛する土谷さんと、その愛に応えるジョージちゃん。しかし、ジョージちゃんとふたりで暮らすようになってからは、育児ノイローゼならぬ「育犬ノイローゼ状態」といえるほど、大変な時期があったそうです。
ツーリングを始めたきっかけと共に、育犬ノイローゼ状態をふたりはどう乗り越えてきたのか、詳しく伺います。
半信半疑ではじめた愛犬とのツーリング。今ではとっておきの時間に
ジョージちゃんを背中に乗せツーリングをするようになったのは、約3年前のこと。お母さんから、愛犬と一緒にツーリングに出かける飼い主さんの動画が届いたことがきっかけでした。
「もともと僕の趣味がバイクで、休みの日はよくツーリングに出かけていました。でも、その間ジョージを留守番させることに罪悪感があって......。ツーリングは続けたいけれど、自分が留守の間にジョージに何かあったら嫌だなと。『本当にできるのかな?』と最初は半信半疑でしたが、とりあえず一緒にツーリングができないか、試してみることにしたんです」
背負う人間の体にピッタリとフィットする犬用のリュックを購入し、半信半疑ながらも、まずは自転車で走ってみました。
すると、ジョージちゃんはキョロキョロ周りの風景を見ながら嫌がる様子もなく、乗ってくれました。そのままバイクに乗り換えてみても、問題なかったといいます。
「抵抗しないってことは、ジョージもきっと一緒に楽しんでくれているんじゃないかな、と思っています。ジョージは、嫌なことは嫌だというタイプなので。風に当たって、気持ちよさそうにも見えたので、安心して少しずつ距離を伸ばすことにしました」
ツーリングに出かける時、ジョージちゃんはいつもゴーグルを装着します。走行中に目を守るためにつけ始めました。
「はじめは少し抵抗があったようですが、今では全然嫌がりません。走行中、目がチカチカする違和感も解消され、ジョージ自身も『意外と快適じゃん』と思ってくれたんじゃないですかね」
新しい挑戦にはいくつかハードルもありましたが、ツーリングの気持ちよさを体感できたからか、いまではジョージちゃんもすっかり慣れた様子です。
「愛犬なしのツーリングは、もう考えられない」
過ごしやすい気候の春や秋の季節には、休日丸1日ツーリングに出かけます。1時間ごとに休憩をとり、食事やトイレ、お散歩を済ませ、またバイクを走らせます。1回のツーリングで合計5時間ほどバイクにまたがるそうです。
「週に1〜2回はツーリングに出かけます。信号待ちのときに、メーター越しか、もしくは振り返ってジョージの表情を確認しています。ほかのワンちゃんと暮らす皆さんもそうなのかもしれませんが、ツーリング中もめちゃくちゃジョージに話しかけますね。それに慣れてしまったいま、ジョージなしのツーリングは寂しすぎて考えられません(笑)」
土谷さんはできるだけ天気のいい日を選んで、ジョージちゃんと出かけます。しかし、過去には天気予報が外れて土砂降りのなか帰ってくるなんて日もありました。
「寒すぎて手の感覚はなくなるし、ジョージはブルブル震えてるし.......。思い出すだけで泣きそうになりますね(笑)ジョージには本当に申し訳ないと思いつつ、僕にとっては苦しくもいい思い出です」
愛犬と仲良くツーリングをする姿が人々にもたらすもの
土谷さんは「ジョージの相棒」というInstagramアカウントに、ツーリングの様子を投稿しています。
もともとは趣味のバイクアカウントとして開設したものでした。しかし、一緒にツーリングに出かけるジョージちゃんの写真を載せてみると、想像以上にたくさんのリアクションが。
「今では完全にジョージアカウントになりました(笑)」
ジョージちゃんのファンの方から、たくさんのコメントやDMが届くそうです。
『つらい時に投稿を見て元気をもらいました』
『ドライブ中に恋人と喧嘩をし雰囲気が悪くなってしまったが、そのときたまたまふたりがツーリングする姿を見て、場が和み仲直りができた』
『愛犬との関係がうまくいかず苦しくなっていたが、ふたりを見てあきらめずにがんばろうと思えた』など、見る人たちの癒しや元気の源になっています。
「柴犬がバイクに乗ってるだけなのに、なんでこんなコメントが届くんだろうと最初は不思議に思っていました。しかし、この間、ジョージのファンの方に直接お会いする機会があり、僕らへの愛を熱弁してくださる人もいて、『あ、なるほどな』とやっと腑に落ちました。その熱量に直接触れると、僕らは本当に人を癒す力があるんだなって。自分で言うと照れくさいですけど(笑)」
ジョージちゃんとツーリングを楽しむのが一番の目的で、SNSの投稿は二の次だと言います。SNS用に着飾るのではなく、純粋に趣味を楽しむ等身大のふたりだからこそ、多くの人を惹きつける魅力があるのかもしれません。
「育犬ノイローゼ」の経験が愛犬と真剣に向き合うきっかけに
ジョージちゃんを迎えたのは、約6年前のこと。実家でワンちゃんとくらした経験があり、土谷さんは幼少期から友達感覚で遊べるワンちゃんとの関係性に憧れていました。
ワンちゃん探しを始めたある日、ペットショップのガラス越しから土谷さんを見つめる柴犬の女の子に一目惚れ。それが、ジョージちゃんとの出会いです。
交際相手と迎えたジョージちゃんでしたが、交際の解消とともに土谷さんとジョージちゃんのふたりぐらしが始まります。すると、ジョージちゃんも環境の変化を感じたのか、落ち着かない日々が続いたといいます。
「当時はジョージをケージに入れていました。それが嫌だったのか、ケージを噛んで壊したり、夜中ずっと吠えてしまって。ご近所にも迷惑をかけていました。正直、もうジョージを連れて死んでしまおうかなと思ったことさえあります。そんなことを考えてしまう自分にも絶望する。そんな悪循環から抜け出せなくなっていたんです」
「今思えば、完全に育犬ノイローゼ状態だった」と土谷さんは当時を振り返ります。
ろくに眠れないまま仕事に行く日々が2ヶ月ほど続いたある日、土谷さんは「もういっか」とどこかあきらめる気持ちで、ジョージちゃんをケージから出すことを決意します。
そのうち、部屋の中で自由に動けることに満足したのか、ジョージちゃんの吠え癖はすっかりなくなったのです。
愛犬との向き合い方に正解はない。自分なりの答えを探すことが大切
子犬のしつけや育て方に関する情報は、インターネットや書籍など、世の中にたくさん溢れています。しかし、それらに惑わされるのではなく「目の前の愛犬がどうしてほしいかに向き合うこと」が大切だと、土谷さんは自身の経験から学びました。
「夜中に吠え続けるジョージは僕に何を伝えようとしているのか、真剣に考えるようになりました。犬に関する情報はたくさんありますが、僕とジョージがどう関係性をつくっていくかについては、どこを探しても正解は転がっていません。これからのことを真剣に考えて、悩んで悩んで自分で答えを出すしかないんです」
『ケージの中にいて欲しい』『家を毛だらけにしたくない』『粗相をされたくない』など、人間がいくら望んだところで思う通りにはいきません。そんな時は「まずは自分の当たり前を疑ってみてほしい」と土谷さんは言います。
「犬は吠えるし、噛むし、物を壊す生き物です。何かを覚えさせようとしても、プロでもない一般の僕たち素人にはそう簡単にできることではありません。愛犬の粗相や吠え癖は、これからその子とつくっていく思い出と比べたら、本当に大したことではないんです。その子と向き合うことさえあきらめなければ、いつかきっと愛犬にも伝わります。その時を信じて待ちましょう」
育犬ノイローゼ状態だった土谷さんの心に響いた1つの作品があります。それは、殺処分がゼロになることを願って描かれた『ある犬のおはなし』という絵本です。ある家庭に迎えられた1匹のワンちゃんが保健所に預けられ、殺処分を迎えるというストーリー。Youtubeでも動画Ver.を観ることができます。
「とにかくジョージにこの結末を迎えさせてはいけないと強く思いました。それと同時に、僕がジョージよりも先に死ぬことは絶対にいけないことだと。僕は人生でうまくいかないことがあると『いざとなれば死ねばいいや』って思っていた人間なんで。でも、ジョージがいるうちは死んではいけない。それがこの命を預かった責任だと考えるようになりました」
ファンの方からは、土谷さんのハーフヘルメットを心配する声もあるそうです。
「たしかにハーフヘルメットは安全とは言い切れません。実際、僕も一人で乗っていた時はずっとフルフェイス(首から上全体が覆われているもの)で走っていました。ただフルフェイスだと、後ろのジョージの様子があまり見えません。でもハーフヘルメットだったらジョージの表情や感情を良く読み取れて、走行中も会話ができるので、あえてこのスタイルにしています。また、ジョージのことも考えて、犬用のヘルメットもいくつか試したことがあるのですが、なかなか固定できるものがなく、かえって苦しそうにしていたのでやめました。ジョージが被れないのに自分だけ被るのは気が引けますが、とにかく安全第一で運転しています」
唐揚げ屋の開業と共に始まった、愛犬との新たな物語
2024年1月、土谷さんは福岡県筑紫野市に唐揚げ専門店をオープンしました。サラリーマンを辞め自身のビジネスを立ち上げたのも、ジョージちゃんと過ごせる時間を増やすための選択でした。
「平日ジョージを留守番させるのが嫌で、何かいい方法はないかずっと考えていました。今はまだ元気だからいいですけど、いずれ老犬になることを考えて、ジョージも一緒に出勤できるような働き方にしました」
しかし、いざジョージちゃんをお店に連れて行くと、唐揚げを揚げる音にビクビクと怯えてしまいました。環境が整うまで、しばらくはお留守番することに。
「まさか、唐揚げを揚げる音が怖いなんて考えてもいませんでした。ジョージが慣れるまではお留守番ですね。ジョージに会いたいと言ってくれるファンの人たちもいるので、従業員を雇うなり、またゆっくりいい方法を考えていきたいと思います」
土谷さんとジョージちゃんが、ふたりでつくりあげていく物語。時に予想外なことも起こりますが、その都度一生懸命考え、話し合い、ふたりならではの選択をしながら物語りのつづきを紡いでいくことでしょう。