犬の発情期はいつから?メスとオスの行動の違いや対処法、注意点について解説【獣医師監修】

犬の発情期はいつから?メスとオスの行動の違いや対処法、注意点について解説【獣医師監修】

愛犬に子どもを産ませようと思っている飼い主も、逆に産ませたくないという飼い主にとっても、犬と暮らすうえで避けて通れない発情期についてしっかり理解することは必要です。今回は、発情期を迎えた犬の変化やその対処法についてchicoどうぶつ診療所の所長の林美彩先生に解説いただきます。

犬の発情期はいつから始まるの?

犬が性成熟を迎える時期には個体差はありますが、オス・メスともに生後612か月頃といわれています。人間の閉経にあたるものは特になく、全身の機能が低下しない限り、高齢になっても発情するのが一般的です。飼い主さんは、犬の様子をよく観察しつつ発情期に備えましょう。


犬の発情期はどれくらい続くの?

個体差はありますが、通常8~14日です。メスの犬の生理にあたる出血「ヒート」が始まって、発情期が完全に終わるまではトータルで30日程度と言われています。ヒートを迎えると外陰部が腫れて大きくなり、10日程度出血した後に排卵し交尾適期となります。ヒートの時期を「発情前期」といって、その時期が終わったあとに「発情期」(オスを迎え入れる時期)がきます。オスの場合には、明確な発情期はありません。発情期のメスのフェロモンをかぎつけ、発情するので、発情期のメスに出会うことが発情期のきっかけになります。


発情する周期はあるの?

メスの発情には季節性があり、春と秋に迎えるのが一般的であるといわれています。成熟を迎えたメスは、610か月の周期で発情し、年12回程度の周期で繰り返します。大型犬に比べて小型犬ではもう少し頻繁にくる傾向があるようです。ただし、冷暖房完備で季節感がなくなった現代では、時期を問わず発情することもあるようです。


発情休止期と無発情期

発情休止期とは、発情期が終わってオスを許容しなくなってからの約2ヶ月間のことです。卵巣からプロゲステロンと呼ばれる妊娠ホルモンが分泌されて、子宮内膜を増殖させ卵子が着床できるようにします。無発情期は発情休止期のあとに来る期間で、機能的な卵胞や黄体は卵巣に存在しなくなります。この期間も個体差があり、48か月間と言われています。

発情期の犬はどのような特徴があるの?

【獣医師監修】犬の発情期はいつから?メスとオスの行動の違いや対処法、注意点について解説発情期の犬は通常時と異なり、体調や行動面においていろいろな変化をみせることがあります。オスとメスの場合に分けて、それぞれ見ていきましょう。


オスの場合

オスの犬の場合は、メスに接したかどうかが目安となるので、室内飼いをしているのであれば、わかりやすいかもしれません。発情すると、落ち着きがなくなってメスに近寄りたがる、飼い主のいうことを聞かなくなる、マウンティングする、マーキングが増えるなど、その子によって行動はさまざまです。攻撃性が増して未去勢の雄同士で喧嘩になることもあるようです。メス同様に、いつもと違った様子を見せていたら、発情期に入っているかもしれないので注意が必要です。


メスの場合

発情期の目印になる発情前期は、長い子の場合23週間ほど続くこともありますが、短い子や出血の量が少ない子の場合は、注意深く観察していないと見逃してしまいます。普段より腰のあたりや陰部を気にしたり、陰部を舐めたりする様子が見られたら、すでに発情期を迎えているかもしれません。発情期を迎えると食欲が増えたり、逆に低下したり、元気がなくなったり、そわそわしたりと普段と違う行動がみられる子がいます、マウンティングする、おしっこの回数が増える、体温がいつもより高めになるなども、ひとつのサインとなる場合があるので気にしてあげてください。

発情期の犬への対処法と飼い主が気をつけるべきことは?

まずは、日ごろから様子を観察していて、発情期に入っているかどうかに気づくことが肝心です。女の子の場合は特に子宮の病気や妊娠も含めて体調に大きくかかわることなので、注意深く見守ってあげたいですね。


体調の変化

ホルモンの影響で落ち着きがなくなり、水分摂取量が増えて排尿回数が増える、元気や食欲の低下などが見られます。フードをふやかす、温めるなどして食べやすい工夫をしてあげましょう。トッピングを加えて興味をそそるのも効果的です。この時期はできるだけリラックスできる環境を整え、マッサージなどを行ってあげるのもいいでしょう。


住環境や散歩中の配慮

発情期による出血の量が多い場合は、ソファやカーペットを汚してしまわないように、サニタリーパンツやオムツなどを利用するといいでしょう。パンツを履かせることで、他の飼い主にヒート中であることを知らせる目印にもなります。とはいえ、犬がパンツを嫌がったり、飼い主さんがパンツをこまめに変えてあげられたりできない場合には、カバーやトイレシート、汚れても良いマットなどを用意して、住居面を保護する方法に切り替えましょう。ぬるま湯で濡らした清潔なタオルで陰部を優しく拭き取ってあげてもいいでしょう。

 

また、発情期のメスは、フェロモンの刺激でオスの犬を興奮させてしまいがちです。そのため、お散歩はいつもと違うコースに変える、時間帯をずらすなどして、散歩中にほかの犬と遭遇しないように工夫するといいでしょう。


発情休止期には子宮蓄膿症に注意

発情休止期の終わり頃は子宮内で細菌が繁殖しやすくなります。特に高齢でお産をしたことがない犬は子宮蓄膿症に罹りやすい時期です。黄色いドロッとした液体に赤い血液を混じるようなら、病院で診察を受けましょう。また、子宮蓄膿症では、膿が出ずに細菌が体内に広がってしまうこともあります。毒素の影響で、飲み水やおしっこの量が増えることがありますから、食欲や元気がないなどのほかの症状と合わせて注意してあげましょう。外陰部の衛生を保つことを心がけて、ケアしてあげましょう。

犬の偽妊娠(想像妊娠)への注意

【獣医師監修】犬の発情期はいつから?メスとオスの行動の違いや対処法、注意点について解説人間と同じように、犬も想像妊娠してしまうことがあります。妊娠した時と同様に、黄体ホルモンというホルモンが分泌されてしまう事が原因です。黄体ホルモンの分泌が低下するのに代わって、乳腺刺激ホルモンであるプロラクチンの分泌が活発になると、偽妊娠の症状が出現するのです。


もし偽妊娠になったら

偽妊娠は妊娠と同じような症状となります。食欲が落ちるようであれば食事の工夫をしてあげましょう。また、乳汁分泌が見られる場合には乳頭には触らないようにすることも大事です。特定のおもちゃを赤ちゃんと勘違いしてしまうことがあるので、そうした場合はおもちゃを取り上げないようにしましょう。そのまま様子をみていると3か月ほどで自然治癒しますが、抗プロラクチン薬などの投与で、偽妊娠の症状を軽減することができます。しかし、薬品投与には副作用がある為、犬に負担がかかります。避妊手術を施すことで偽妊娠も予防することができます。

犬の避妊手術、去勢について

新たな子犬を望まないのであれば、避妊もひとつの選択肢です。健康面では病気の予防につながるなど、メリットも大きいです。メスであれば、卵巣の摘出、あるいは卵巣と子宮の療法摘出をします。オスの場合は、精巣摘出(去勢)をします。


犬の避妊手術、去勢をするタイミングはいつ?

避妊手術や去勢のタイミングとしては生後68か月頃が良いと言われています。日本では生後6か月頃前後に行うことが多いようです。とくにメスの場合は最初の発情期の前に避妊手術を行うと、乳腺腫瘍という病気の発生を高い確率で予防することができると言われています。乳腺腫瘍とは乳腺の一部にしこりができる病気で、悪性の場合、進行が進むと命を落とす場合があります。


犬の避妊手術、去勢をすることと発情に関係はあるの?

避妊手術や去勢を行うと発情には大きく影響があります。メスの場合、避妊手術を行うことで繁殖ができなくなるので、発情するサイクルがなくなります。オスの場合はメスの発情に誘われることがなくなるので、生殖に関する多大なストレスにさらされることがなくなります。

避妊手術をすることによるメリット・デメリット

【獣医師監修】犬の発情期はいつから?メスとオスの行動の違いや対処法、注意点について解説避妊手術にももちろんメリット・デメリットが存在します。それぞれちゃんと理解をして、行うかどうか判断をしましょう。


避妊手術のメリット

健康面では、乳腺腫瘍や子宮蓄膿症などの性ホルモン関連疾患の発症率が低くなるというメリットがあります。発情期出血がなくなることで、出血のケアもなくなりますし、ほかの犬への影響を考える必要がなくなります。また、発情期にストレスを感じる犬の場合は、性格が穏やかになる子が多いようです。


避妊手術のデメリット

発情によるエネルギーを消費しなくなるため太りやすくなります。失禁する犬もいますが、これは治療が可能です。また、皮膚病になりやすくなるようです。

去勢によるメリット・デメリット

【獣医師監修】犬の発情期はいつから?メスとオスの行動の違いや対処法、注意点について解説避妊手術同様に去勢にもメリット・デメリットはあるので、こちらもしっかりとおさえておきましょう。


去勢のメリット

前立腺肥大や肛門周囲腺腫、精巣腫瘍などの性ホルモン関連疾患の発症率が低くなります。また、マーキングやマウンティングの頻度が少なくなったり、性格がおとなしくなったりする場合があります。メスを求めてさまよう癖があるオスの場合は、その行動が治まります。


去勢のデメリット

メスの避妊手術と同様に、太りやすくなったり、皮膚病になりやすくなったりする傾向があります。

 

※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント:

犬の成長は早く、ついこの間まで子犬だった犬の成長に、飼い主が追いついていくのはなかなか大変かもしれません。また、子犬を望まない飼い主さんの中には、発情期についてあまり関心のない方もいらっしゃるでしょう。しかし、犬は、性成熟し発情期を迎えることで大きく身体が変化します。ホルモンの変動による精神的な影響もありますし、病気のリスクにもつながる発情期。愛犬を注意深く観察して、心と体を支えてあげて欲しいものです。


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監修/林美彩先生(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。著書に「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)。

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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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